engage your senses

人類の誕生以来、私たちは周囲のものを味わい、周囲の匂いを嗅いできました。そして、私たちがどのように「知覚する」かは、最も心揺さぶれる記憶や感情と本質的に絡み合っているのです。

著名な香りのスペシャリストであり、歴史学者でもあるアニック・ル・ゲレ氏が著した、ジボダン社の限定版アンソロジー『An Odyssey of Flavours and Fragrances』 の第1章『Givaudan, a secular history』から。     

優れた書き手と写真家の作品を通して、古代文明にまでさかのぼり、フレーバーとフレグランスの歴史をたどっていきます。そのなかで、この章では、ジボダン社と業界の歴史を作ってきた立役者の何人かを紹介しています。 

    

Ancient Egyptian drawing

はるか古代からずっと​

香水が、古代文明のとても貴重な記録の役目を果たすことは昔から知られています。古代エジプト人は、来世で永遠の命を得ることを願い、樹脂や 芳香性のゴム質、軟膏を使い、香料を塗った亡骸(実質的には神)を聖別していました。

 

古代エジプト人は、食べ物の風味づけにもハーブや植物を使用し、蒸留や「マセレーション」を施して、オイルやワインなどの液体からフレーバーを抽出していたのです。ほかに、ペルシャ人とアッシリア人は、バラとイチジク風味のワインを作っていました。   

    産業の誕生​

    中世になると、初めての香水がヨーロッパで生まれます。ローズマリーの花をエチルアルコールと一緒に蒸留してできた「ハンガリーウォーター」は、ハンガリー王妃が罹った多くの病を治したといわれています。

    16世紀から17世紀にかけて、人々は、粉末香料や香水を染み込ませた手袋、アロマティック・ビネガー、香り付きマスクで、猛威をふるう伝染病から身を守ろうとしました。

    香水が官能性の代名詞となったのは、啓蒙時代のことです。パフューマーは、「ルオー・センシュエル」 など、人を惹きつける魅惑的なライト・フレグランスを作っていました。ちなみに、「ルオー・センシュエル」は、当時非難の的となっていたフランス王妃マリー・アントワネットがつけていたことで有名です。

        

    グラースのゲーム・チェンジャー​

    フランス・グラースのシリス一族は、18世紀末から、香料製造をグローバルな産業に育て上げていきます。彼らは、香料製造に関するその知識に加え、フランスの植民地政策と、上流社会との交流のおかげもあり、中央アフリカやコンゴ、コモロ諸島、マダガスカル、インドシナ、アルジェリアなどにプランテーションや工場を作ることができました。     

    ジボダン兄弟の歩みの第一歩​

    一方、レオンとザビエルのジボダン兄弟もまた1895年にチューリッヒで化学香料の製造を開始し、研究とイノベーションに別のアプローチで着手します。ジボダンとシリス、両一族が同じ道を歩むようになるのは、ずっと後の話です。

    ジボダン兄弟はほどなくして、拠点をチューリッヒからベルニエに移しました。この1エーカーの新しい敷地で、人工基剤の開発に成功。これにより、社内パフューマーが新しいフレグランスを作りやすくなりました。

    ジボダン社は1930年代になるまでに、米国、カナダ、イタリアに子会社を置き、スイス、フランス、米国に工場を持つまでに成長し、香水と石鹸業界向け化学製品のトップメーカーとなったのです。

        

    旅と統合​

    第二次世界大戦後、業界は整理統合の最初の波に洗われました。

    1958年、ジボダン社は、チューリッヒ近郊のデューベンドルフに本拠を構える、食用人工香味料のメーカー、エスロルコ社を統合して、新しい市場への進出を果たします。それ以降、当社はフレーバーとフレグランス、2つの市場向けの製品を製造してきました。

    1963年、 シリス一族のファミリー・ビジネスが、ホフマン・ラ・ロシュ社に統合されます。一方、ジボダン社はこの時期、合成製品では対応できない部分を補完すべく、新しい天然の香りを求めて世界各国を巡る調査研究に乗り出しました。この役に立ったのが、香水メーカーのルール社の統合です。同社は創業当時、香料の原料となる植物を自社で栽培しており、また、ファインフレグランスづくりの卓越した技術を誇っていました。

    2000年、ジボダン・ルール社は、ホフマン・ラ・ロシュ社から独立して上場企業となり、これ以降、クエスト・インターナショナル社の統合など、順調に事業を拡大していきます。ちなみに、クエスト・インターナショナル社のファインフレグランス事業を率いていたのは、シリス一族の最後の子孫イブ・ド・シリスです。     

    現在のジボダン社

    ベルニエの1エーカーの敷地が、今では50エーカーに拡張されて、ジボダン・グループの本部となっています。デューベンドルフのエスロルコ社の拠点は現在、フレーバー部門の本部兼フレグランス部門の研究開発センターです。

    2015年現在、ジボダン社は40ヵ国で事業を展開し、世界各地に88の拠点を置き、9,500人以上の社員を擁しています。

    これは、『An Odyssey of Flavours and Fragrances』に生き生きと描かれた、数世紀にわたるジボダン社の歩みに加えられる、新たな1ページです。