engage your senses

70年の間ほぼ毎朝、パリ郊外にあるスクールでは、1日の始まりに難しい試験に挑むごく少数の学生たちの姿が見られました。ジボダンのパフューマリースクールで熱心に学ぶわずか8人の学生は全員、毎日このジーン・カールズ・テストに挑みます。1つの成分をひと嗅ぎし、500余りの原材料パレットからそれを識別できるよう自分の鼻を鍛えているのです。

Jean Carles

ジーン・カールズによって1946年に設立されたこの学校は昔も今も、毎年ごく少数の学生しか入学できません。しかし、一旦その狭き門をくぐれば、そこで熱心に学ぶだけの価値はあります。学生たちはいずれ世界のトップパフューマーの一員へと育っていくからです。

   

パフューマーとは芸術にも科学にも精通した者​

パフューマリースクールは今年、創立70周年を迎えます。この70年の間にパフューマーの役割は大きく変化しました。

現在、「ネ(nez)」(フランス語で「鼻」を意味し、「一流のパフューマー」に与えられる称号)には、芳しい香りを創造する能力だけではなく、芸術、マーケティング、ブランディング、消費者、およびトレンドに関する幅広いスキルが求められます。パフューマーは「l'air du temps」――「レールデュタン(l'air du temps)」といえば、かつてスクールの学生だったフランシス・ファブロンが手がけたニナリッチの香水ですが、ここでは「時の流れ」も意味します――の本質を見抜き、引き出せるようでなければなりません。

文化を大きく変えるきっかけとなるトレンドに対して、また、昨日は甘いグルマン、今日は移り気なウードというように私たちがどういったフレグランスに注力すべきかを左右するトレンドに対して、学生たちはアンテナを張っておくよう教え込まれます。

Givaudan perfumery student

 

 

   

研究室を飛び出して外の世界へ​

ディレクターのアランは、学生が時代の変化についていけるようにするための取り組みについて、こう語りました。「学生たちを定期的に研究室から外の世界へ送り出し、ありとあらゆる香料原料からインスピレーションを得られるような体験をさせています。シチリア島のシトラスの果樹園やアンダルシアのシスタス農園へ足を運び、ありのままの自然の美しさの中に身を置くのです。他にも、インスピレーションの源は私たちのごく身近にもあります。それはパリです! ドアから一歩外に出ればそこは世界の文化の中心地という環境があり、学生たちはたびたび「社会見学」に出かけ、パリの街のすべてを肌で感じ取っています。美術品や近代建築に至るまで、個人的に興味を持ったことは何でも探究することができます。

学生が将来担う役割についての指導も行っている、とアランは言います。

「入学早々、学生はジボダンの様々な部署、例えば営業というビジネスの世界やサプライチェーンのサステナビリティに関する取り組みなどとかかわりを持ちます。また、難しいことのようには聞こえないかもしれませんが、学生は世界中を旅すること、また時には彼ら自身がアイコン(象徴的存在)になることへの準備ができていなければなりません。それはフレグランスでは、香りに名前を付けるよう求められることがよくあることだからです。パフューマーの仕事は今も創造的な仕事であることに変わりありませんが、私たちはそこに実践的要素を加えています。」

   

パフューマリーの未来を作る​

この実践重視の考えから、パフューマリースクールは2015年、南アジアのお客様が同地域の成長市場を最大限に活用できるよう、シンガポールに新たな拠点を開設しました。フランス以外ではここだけとなる新キャンパスを拠点として、一期生となるわずか3人の学生は今後、近隣の中国やベトナム、インドネシアを訪れ、お客様が抱える課題に直接向き合い、お客様理解と知見の蓄積に努めることになります。そしてそれらを優れたフレグランス作りに生かし、将来のブランドの成功に貢献していくことが目標です。先日、シンガポール校の1年生がフランスに到着し、1年間の留学生活をスタートさせました。これからの日々は、アルジャントゥイユの本校の学生たちにとっても、刺激的なものとなることでしょう。

創立70周年を祝うイベントの一環として、常に学び続けるという精神のもと、すべての学生はジボダンのヤング・パフューマーズ・フォーラムの公開討論会に参加し、現役のパフューマーが実際に日々の業務にどう取り組んでいるのかを学ぶことになっています。アランは次のように説明します。

「若手パフューマーはすでに数年の実務経験があり、ビジネスと学校のギャップを埋めてくれる存在です。そういった若手パフューマーたちのニーズに耳を傾け、今後のスクールのカリキュラム作りに生かしたいと考えています。」

フレグランスには新鮮で魅力的な香りが常に求められるように、70周年を迎えたジボダンのパフューマリースクールも、しっかりと時代に寄り添い続けます。